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矢崎病院 婦人科診療

卵管鏡手術

現在全国で約100万カップル、10組に1組の夫婦が不妊で悩んでいると言われています。不妊症の原因のうち、卵管が詰まったり、癒着したりして、卵子や精子が通りにくくなる「卵管因子」は不妊原因の約30%を占めています。卵管不妊は原因の頻度が高いにもかかわらず、それを治療することは卵管の構造の特殊性から困難と考えられてきました。そのため、子宮卵管造影検査や手術中の通水検査などで、卵管閉塞が見つかった場合、体外受精を薦められるケースが多いのが現状でした。
しかし、近年の内視鏡技術の進歩により、卵管不妊に対する治療が少しずつ可能になってきました。
卵管鏡手術(卵管鏡下卵管形成術(以下FT))は特殊な内視鏡を用いた卵管閉塞の治療方法です。FTを行うことによって、卵管の通過性を回復することができ、自然妊娠が期待できます。FTは健康保険の適用がなされている治療方法なので負担も少なくて済みます。

FTは卵管閉塞・狭窄の治療のために開発された新しい不妊治療方法です。直径0.6mmのカメラの内部に光ファイバーを束ねたカメラを内蔵し、卵管の内部を観察します。それと同時に「バルーン」と呼ばれる微少な水風船のようなものに一定の圧力を加えて膨らませて、ゆっくり卵管内を進めながら、を押し広げて行きます(図1)。

正常の卵管内腔は、繊毛と呼ばれる細胞が襞(ひだ)のように隆起し、還流用の生理食塩水によって、揺れているのが分かります(下記図2)。


図2 卵管内腔の写真
【図1】
麻酔は、静脈麻酔という方法で行います。点滴をとり、鎮痛剤などを注射しながら行います。手術は平均して20分程度で終了し、夕方には帰宅が可能です。 非常に特殊な手術ではありますが、重篤な合併症はほとんどありません。当院のこれまでの実績でも、帰宅後に発熱を認め、数日間の入院と抗生剤治療が必要であった例が1例あるだけです。
FT法による治療成績
一般的に、FTによる卵管閉塞の開通率は約80-90%といわれます。そして、妊娠率は25-30%と報告されております。当院では、2006年9月から2009年5月までの間に、99例のFTを施行しております。その治療成績では、開通率が98%(95/99)、妊娠率が28.3%(28/99)でした。このうち、流産が9例(32.1%)、子宮外妊娠が3例(10.7%)でした。FT施行後、妊娠するまでの期間を検討すると、全体の32%にあたる9例がFT施行後、翌月に妊娠が成立していました。3か月後、6か月後、9か月後の累積妊娠率はそれぞれ50%、79%、86%でした(下記の図3参照)。
  症例数
開通 95例 98%
妊娠 28例 28.3%

図3 累積妊娠数とFT術後妊娠までの期間
このことから、FT施行後半年以上経過しても自然妊娠に至らない場合は、卵管の再閉塞の可能性を疑い、再度卵管造影などの検査をするか、あるいは治療方針を体外受精に切り替えるかなどを検討する必要があると考えております。
FT法の費用について

FTは健康保険適用手術です。窓口でのご負担金額は概算で16万円前後となりますが、高額療養費制度の適用となります。したがって、保険加入者の収入にもよりますが、後日8万円前後の還付金を受けることができます。また、民間の医療保険にご加入されている場合にも、ほぼ全例で給付金の対象になります。


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